大工さんとの出会い~家は人が建てるんだ

それからと言うもの、土曜日で休みのときは必ず家を見に行くようになった。
いつもデジカメと差し入れに缶コーヒーとペットボトルのお茶を持って出かける。


建築請負契約の時、神野さんから、

「もう少しでうちでも一番腕のいい大工さんが空くんです。棟梁のスケジュールを確保したいので、是非とも契約をお願いしたいんですよ」

というお話しがあったのだが、正直、神野さんのその言葉はあんまり信用していなかった。そんなセリフ、営業マンなら誰でも言うよなあ、くらいに考えていた。

 もちろん、大工さんもたくさん抱えているだろうから、おおやけには誰が一番か、なんてこと、会社内では言えないと思うし、我が家を建ててくれた大工さんが「一番」かどうかは比べようがないので本当のところはわからない。

 ただ、少なくとも、毎週のように建築現場に通い、大工さんと話し、仕事の様子を見て、とっても信用できる、好感の持てる人だということは分かった。

神野さんの営業トークも、少なくとも契約欲しさだけに言った言葉ではないことも理解した。


上棟式の次の週だっただろうか。

棟梁に何気に言われたのは。

「子どもたちにとっては、ここが故郷になるんですね」


僕にとっては、本当にハンマーで頭を殴られたような一言だった。

ただ、次の一言で救われた。

「俺は好きですよ。この土地。仕事してても静かですし、2階で作業しているとね、川べりに咲いている桜の木から、花びらがひらひらと飛んでくるんですよ。いいところだと思いますよ」
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僕が最初、山田君(仮名)と土地を探していた頃、その条件は、駅近・静か・便利・日当たりがいいなどであったが、予算から言ってもそんなことは土台無理な相談であった。

その時「子どもたちにとっては買った土地が故郷になる」なんて考えもしなかった。


僕は北海道で生まれ23歳の時まで実家で暮らした。幸い、両親は今も健在で実家もある。

僕は故郷を持っている。

棟梁は青森出身で、やっぱり就職でこちらに出てきている。

棟梁も故郷を持っている。僕とそう歳は変わらないが、お子さんは既に高校生と言っていたので、早くに結婚したのだろう。でも子どもたちにとって北海道や青森は「おじいちゃん、おばあちゃんがいるところ」でしかない。故郷はここになる。


土地を購入し、そこに家を建て、その土地に住まわせてもらうことは、子どもたちにとっては、親が思っている以上にこれからの人生に大きな影響を与えるかもしれない。少なくとも子どもたちにとって大切なのは、便利さではないことだけは確かだ。

僕は棟梁と話しをしながら、この場所に決めてよかったなあ、としみじみ思い、出会いや縁の不思議さと、この土地の情報を一番に持ってきてくれた神野さんに改めて感謝したのだった。

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